月別アーカイブ: 2015年5月

OPMを認め、ビジョンを明確にしろ

ヤフーしかり、アップルしかり。
時代の流れを理解することは、いと難しくなり。

たぶん多くの投資家は、今年には3Dプリンターで結果を出すに違いないと、何の根拠を持たない空想でソディックに投資したんでしょうね。
デジタルにより、産業革命の先頭を走り、日本の物つくりを抜本的変えるかもしれないって言うことを、実は「当事者」のソディックさえ「まったく理解していない」。
それは、決算資料を見れば解ります。
日本版インダストリー4.0へは一言も言及していないですし。
3Dプリンターに関する記述が多くあっても、それが産業界に対してどんなインパクトを与えるのかには、まったく言及していない。

単純に引き算が足し算になったぐらいにしか考えてない。
今までデジタルとは無縁の業界だから、それがどれほど大きなインパクトを持っているのか理解することができないのかもしれない。
早い話、OPM森本社長が目指す、デジタル革命の意味すら理解していないし、理解しようともしていない。
ちょっときつい言い方をしましたけど、ソディックの一部の人は理解してますよ。
ただ、それを全社的にコンセンサスにすることは不可能。
なぜなら、今でもソディック=放電加工を否定することは絶対にできないですから。
社内的にそれを全面に打ち出せば、ソディックの屋台骨をも揺るがしかねない。
あくまでもソディックからすれば、3Dプリンターは「放電加工機」の補完的な意味でしかない。
しかし、OPMがやろうとしていることが、どれほど大きな意味があるのかを理解しいるのが、「ソディック」ではなく、OPMの顧客であるフォックスコンやアップル・HPだという事実は絶対に無視することはできない。
普通、そんな巨大企業が率先してOPMテクノロジーを採用すれば、戦略的に第一義的なスタンスを取るはずですよ。
でも、ソディックはそうはしない。
理由は簡単「よくわかってないから」。
装置の技術的は側面は理解しても、それがもたらす巨大なメリットを理解することができない。
決算資料を見れば、具体的な方向性に関する記述はゼロ。
3Dプリンターを頑張って開発しますって書いても、将来のビジョンが書かれてなければ、そりゃあ失望します。
まあ、いいです。
OPMはソディックとは関係なく、自分たちが考えるビジョンを信じていればいいと思います。
ソディックはそれを全面的に認めて応援するスタンスを貫けばそれでOK。
それ以外はまったく期待しない。
とりえあず、「保守的」でもなんでもいいですけど、OPMの方向性だけは尊重してほしいし、それを過小評価することだけはやめてほしい。
10年後、OPMがソディックの売上げを超えることも十分に有り得ることですから。

決算雑感

いろんな見方があるのは当たり前のことですね。
相場が投機化してる時点で、決算後の下落は人気株の宿命です。
下がった理由なんて後付けですから。
マスコミで言う「〜からの思惑でウンタラカンタラ」という取って付けた様な理由と同じ。
相場は相場に聞けですから、明確な下落理由がないのであればマーケットの意見が総意というだけの話です。
しかし、それがそのまま企業価値を反映したものでないのも事実。
会社が利潤最大化のための努力をしているので、株価を必死に上げるために頑張っている訳ではないですから。
自分たちは某掲示板のような、我田引水のための道具には正直辟易してます。
自分で情報を調べることもなく、俄か知識であーだこーだと言われてもね。
それを信じて売ったり買ったりするのはちょっと「投資スタンス」からすれば、明らかな間違いだと思います。
という自分も頻繁に「あそこ」に色々書き込んでいたことをも反省する次第ですが。
株式投資を始めて25年経ちましたが、今でもソディック、っていうかOPM程の可能性のある銘柄は早々見つけることはできないです。
単純に株価だけから判断すれば、ミクシーとかのゲーム関連の方が暴騰率は高いのかもしれないですけど、ずっと世界標準銘柄を探してきた自分にとっては「投機」の対象にはなっても「投資対象」にはならない。
だから自分はOPMに賭けたんです。

さて、今回の決算について触れたいと思います。
ソディックの体質として、今回の決算はあまりにも予想通りでした。
この決算から特に中身を精査する必要もないです。
強いて上げるならば「売上高」がコンセンサスよりも約9%も高く設定されている点と、それにも関わらず営業利益は僅かの上昇になっている点。
純利益を減益と予想しているのは、決算資料が出るまではコメントできないですね。
営業益の伸びが低いのは、為替の変動率の問題と仕入れ価格高騰を考慮してるのかな?
但し、ソディックの場合は生産拠点が世界中にありますから、為替変動の影響はそれほど大きくはないと思ってます。
まあ、その辺も外的要因が大きいですから、企業としての価値を考えるに当たって、自分達は「売上高」を基準に判断するしかない訳です。
売上げが伸びない限り営業益も増えないですからね。
さて、今期のコンセンサスと予想の差が約60億。
これが何に当たるのかは公表されませんけど、その中には間違いなくOPM250Lも入ってます。
ある意味コンセンサスよりも60億多く見積った時点、かなり強気だと言えなくもないですね。
ちなみにOPM250Lを60台売った場合の売り上げは約45億ぐらいだと思います。
おそらく、OPM250Lの利益率は他の工作機械よりも断然低いはずですから、会社への利益貢献度は微々たるもんです。
これが、売上げの伸びに対する営業利益率の低下要因ではないかと、個人的には考えてます。
もっと、具体的に言うと、60台の内12台はすでにOPMというグループ企業への提供なので、利益率はさらに押し下げます。
これが売上げの伸びと利益の伸びが相反する原因です。
逆に言えば、この利益率低下がOPM250Lの出荷台数の伸びを証明してると言えなくもない。
まあ、これに関しては、あくまでも希望的な読みですけどね。
さて、問題は今後の展開です。

段階的にはOPMとソディックが主導するDDM事業が柱になってきます。
今回の数字には、その予測を織り込んでません。
なぜなら、それはOPMラボの事業だからです。
前から言っているように、OPM250L本体の売上げとか利益を大きく期待することは、ビジネスモデル的に少し違います。
以前、ストラタシスと3Dシステムズの話をしましたが、OPMが目指す方向はDDM事業でソディックが装置販売。
じゃあ、どちらの利益率が大きいのかというと、圧倒的にDDM事業が大きい。
OPM250Lを量産型として原価を低くしても、100台売って10億がやっと。
しかも、DDM事業では売り切りではなく1台の装置が毎年継続的に売上げを叩き出してくれる。
森本社長がDDM事業とメンテナンス・サポート・サプライ品の売上げ等、数年で100億を目指すというのは大風呂敷でも何でもなく、客観的に可能な数字なんです。
すでに、20台の装置がフル稼働状態で、毎年ドンドン装置を増やし、さらにOPMシリーズが大型化をします。
さらに、OPMラボ以外の企業との連携が始まりますから、夢は広がります。

デジタル化の流れを止めることはできないよ。

勘違いしてる人も多いと思いますけど、OPM250Lという3Dプリンターは、基本的にパソコンデバイスなんですよ。
つまり、本当のプリンターです。
しかし、ソディックという工作機械メーカーが作ると、なんだかアナログの装置だと思ってします。
これが根本的な発想の間違い。
今まで「職人の技」だった「金型」がデジタルで造形できるようになった訳だけど、かなり年齢の行った職人が、今さらパソコンで「金型」を作るってことは相当大変なこと。
しかし、アナログからデジタルへのトレンドは避けて通れない。
もしかしてOPMラボが一番苦労するのは、これらの熟練工に対してコンセプトを説明する部分かもしれない。
さらに、高いハードルがありますね。
従来の二次元水管から三次元水管への移行という部分。
これに関しては従来工法のノウハウがほとんど役に立たない。
でも、時代は絶対に後戻りできない。
だから、多少の時間は掛っても、パソコンで「金型」を作る時代は必ずやってくる。
「精度」とか「時間」とかという悲観論もなくはないけど、現実にそれらがOPMによってフィックスされてしまった。
HPやアップル、ホンダがその有用性を認識して採用している時点で、もう答えは出てますから。
つまり、時間の問題。
様々なリスクを理解した上で、そのトレンドに乗れた会社だけが甘い蜜を享受することができる。

コンフォーマルクーリングはアプリでは作れない

みんなが勘違いしているもうひとつの部分。
もしかすると、投資家だけじゃなくて、金型業界の人間ですら、勘違いしている可能性が大きいかも。
コンフォーマルクーリングテクノロジー=OPMテクノロジーと言えるほど、この技術は3Dプリンターにとって重要な要素です。
逆に言うと、この技術を使えることが金属3Dプリンターの最大のメリットです。
しかし、3Dプリンターなら、簡単にコンフォーマルクーリングの水管を配することが可能だと、思ってる人も多いでしょう。
MOLDEX3Dというソフトがあります。
これは金型造形のためのCADシステムですけど、現在主要は自動車メーカーのほとんどで利用されています。
そして、OPMは、このMOLDEX3DPにコンフォーマルクーリングのシステムを提供しています。
つまり、MOLDEX3DPのソフトを使う自動車メーカーが金型を設計する場合には、OPMのアプリを利用してコンフォーマルクーリングのシミュレーションを行うことができるわけです。
しかしながら、これで簡単にコンフォーマルクーリングを設計できるわけじゃなくて、最終的には水管の最適化は「人のノウハウ」が必要になります。
しかし、そんなノウハウは従来工法の金型職人は持ってません。
じゃあ、どうするのか。
そこで今まで積み上げてきたOPMテクノロジーが必要になるんです。
OPMが長年培ったコンノーマルクーリングテクノロジーをOPM250Lユーザーと共有するための仕組むを考えたんです。
EOSを始めとする欧米企業は基本的に「金属造形のための知識」は高くても、「コンフォーマルクーリング」の技術は持ち合わせてません。
しかし、サイクルタイム短縮にはこの技術が不可欠であるため、どの金属3Dプリンター開発企業は「コンフォーマルクーリングを配することができる」ということを謳い文句にしています。
ただ、ユーザーが欲する情報は「コンフォーマルクーリングを配することができることではなく」て、「どうのようなコンフォーマルクーリングにすればよいのか」という部分です。
これこそ、最重要な問題です。
どれほどレーザー技術が凄くても、どんなに大きな金型を作れても、この「コンフォーマルクーリングに関するノウハウ」がなくては、まったく意味を成さなくなってしまいます。
差別化の部分では、この技術があったからこそ、HPやアップルがOPMを採用した訳ですね。
だから、OPM250Lが売れない訳がない。
装置が凄いから売れるというよりは、「コンフォーマルクーリング」のノウハウも持つOPMがサポートすることが最も大きな導入動機になります。

まあ、決算があーだこーだという前に、今期どんなサプライズが飛び出すか、楽しみに待つことにしましょう!

アップル・HPの戦略的意図

なぜOPMテクノロジーが必要だったのか

OPMと一緒に仕事している会社は、今まで散々ここで取り上げてきました。
ここを以前から読まれている投資家からすれば既知の事実だとは思いますけど、最近買った人にとっては、何の会社なのか、まるで知らないと思いますので、ちょっと触れたいと思います。

実は、HPやフィリップス?との仕事関係が公になってきたのは、結構最近の話です。
昨年末、ヒューレッドパッカードからの直接受注のIRや、欧州大手電器メーカー(日経情報)からの受注等。
また、その前にはフォックスコンを通じてのアップル製品への金型提供とか。
これを言うと、また「風説」とか言われそうですけど。。
でも、アップル・ホンダ・HPはOPM自体が認めてることですから、特に隠すようなもんでもないと思います。
じゃあ、なんでこんな世界的な大企業が、OPMのような京都のベンチャー企業へ発注するようになったのか、物凄く疑問ですよね。

単に金属3Dプリンターで精度高い金型を作れるのがOPM250LやLUMEXだった、という問題でもないです。
それだけの理由なら、敢えてOPMの3Dプリンターを選択する必要はないです。
HPやアップル、ホンダ向けの金型ともなれば、精度は当然として、それがもたらす大きなメリットがなければ、協業するこは難しいでしょうから。

アップル・ホンダ・HPと言えば、世界中で知らない人は皆無です。
当然、売り込みに来る企業は何千社にも及びます。
そんな、膨大な企業の中からOPMを選択した理由はなんなんだろう???
多分、フォックスコン・パナソニック・ホンダとの関わりが大きかったと思います。
この3社はもう何年も前からの付き合いですから、世界的な情報網を持つアップル・HPが、OPMの持つ卓越したテクノロジーについての情報を得ていないはずがない。
まあ、フォックスコンからの紹介だったっていうのが真実だとは思いますが。

そんな巨大企業の製品に採用されるためには、確実なメリットが見込めないとダメですから、他者では実現できない「何か」が存在していたんです。
自分が聞いた話では、フォックスコンとは5〜6年、HPでも1年以上共同研究をしてます。
実はここで重要なのは、HPにしろフォックスコンにしろフィリップスにしろ、OPMに対し単純に金型を発注した訳ではなく、パラレルな立場としてコンフォーマルクーリングを配した超高精度の金型を一緒に開発したって言うことです。

いろんな見方があるとは思いますけど、主従の関係ではなく、HPやフィリップスがOPMテクノロジーを利用することが、企業にとって大きなメリットであると判断した結果が今回の受注に繋がったんだと思います。
そうでなければ、こんなに時間を掛けてわざわざ3Dプリンタ使って金型作ろうなって考えないでしょ。
時間を掛けてでも、この技術を利用する必要があると判断したからです。
自動車関連では「CFRP」等の炭素繊維を利用するための必須技術であり、アップルやHPでは、サイクルタイム短縮のために必要な技術だからです。
さらに、3Dプリンタを活用することは、HPやアップルでは「デジタル化」という意味でも避けて通れないですからね。

ここのブログで散々ぱら啓蒙している日本版「インダストリー4.0」へ向けた一つの準備だとも言えます。
森本社長は日頃から「金型に拘るつもりは毛頭ない」「すべてのOPM250Lを繋げる」と言っているように、「インダストリー4.0」で3Dプリンタが中心的な役割を果たすことは、誰よりも理解されています。
つまり、世界的な企業が京都の小さな企業と一緒に仕事をしたい理由は「明らかな戦略的な意図」があってのことです。
その意図が理解できれば、今後どんな展開が待っているのか、簡単に理解できますよ。
また、ソディックがそのために果たす役割りも小さくないです。
それは、資金・ネットワーク・技術等。
OPMが何の心配もなく世界に羽ばたくための最良のパートーナーとして、なくてはならない存在です。

目的はサイクルタイムの短縮と精度

その巨大企業が何を目的としてOPMテクノロジーを採用したのか。
ここの読者からすれば「コンフォーマルクーリング」だろ?って思ってるでしょうね。
まあ、その通りなんですけど、実はそれだけではないです。
先ほど、明確な差別化がなければ採用しないと書いたように、OPMには他社にはない何かがある。
上の企業を見ると、基本的に電子制御関連ですよね。
ということは、そこで利用される部品はすべて高精度が必要とされる。
一般的に金属3Dプリンタは、従来工法に比べ精度的に問題があるのではないかというのが、大方の意見です。
しかしながら、すでに電子制御に関わる部品の金型に利用されている時点で、この心配は杞憂です。
ただ、そのことが金属3Dプリンター全体の精度の高さを証明したことには、まったくならない。
もし、そうであれば、上の企業が時間を掛けてまで金属3Dプリンタ金型に使えるまで共同研究はしないはず。
一般論では精度的には問題が残る金属3Dプリンタでも、様々な経験・ノウハウ・技術を情報として3Dプリンタに吹き込むことで初めて「電子制御に堪えうる精度の金型」を造形することが可能になるんです。

何も知らない人は「デジタルの制御なんて、どこが作っても同じだろ」みたいな事を言いますが、それが全然違う。
デジタルと言っても、制御するのはソフトであり、そのソフトを作るのは人間です。
つまり、OPMテクノロジーというのは、そのまま「金型に堪えうる精度を実現するためのノウハウ」と言うこと。
これこそ、巨大企業がほしがる技術なんです。

単にコンフォーマルクーリングだけではOPM250L以外でも作ることはできますし、金属3Dプリンタであれば簡単です。
しかし、それだけではまったく使い物にならない。
金属3Dプリンタを、高精度でも使えるプリンタにしたかったために、フォックスコンとOPMが、長年研究を積み重ねたんですね。
つまり、まとめるとこういうこと。

  • 1 生産時のサイクルタイムの短縮は絶対に必要
  • 2 1のためには金型をコンフォーマルクーリングで造形する必要があるが、従来工法では不可能
  • 3 しかしながら、現状の3Dプリンタでは電子制御向けの制度を持つ金型造形も不可能
  • 4 これをソリューションするためには金型・CAMのノウハウを持つOPMラボしか無理
  • 5 将来的は生産現場へのデジタル化を考えても、金属3Dプリンタを一早く導入する必要がある。
  • 6 そのためにはOPMラボには、資金・ネットワーク・技術を持つパートナーが必要

という理由からOPMはソディックと一緒になったんです。

つまり、「戦略的な意図」というのは、OPM250L等のハードだけが目的ではなく、OPMテクノロジーと金属3Dプリンタの組み合わせでしか、目的とするサイクルタイムの実現ができなかった。
そのために、「京都の小さなベンチャー企業と共同研究しよう」ってことに各社がなったんです。

ご理解頂けましたでしょうか。