アップル・HPの戦略的意図


なぜOPMテクノロジーが必要だったのか

OPMと一緒に仕事している会社は、今まで散々ここで取り上げてきました。
ここを以前から読まれている投資家からすれば既知の事実だとは思いますけど、最近買った人にとっては、何の会社なのか、まるで知らないと思いますので、ちょっと触れたいと思います。

実は、HPやフィリップス?との仕事関係が公になってきたのは、結構最近の話です。
昨年末、ヒューレッドパッカードからの直接受注のIRや、欧州大手電器メーカー(日経情報)からの受注等。
また、その前にはフォックスコンを通じてのアップル製品への金型提供とか。
これを言うと、また「風説」とか言われそうですけど。。
でも、アップル・ホンダ・HPはOPM自体が認めてることですから、特に隠すようなもんでもないと思います。
じゃあ、なんでこんな世界的な大企業が、OPMのような京都のベンチャー企業へ発注するようになったのか、物凄く疑問ですよね。

単に金属3Dプリンターで精度高い金型を作れるのがOPM250LやLUMEXだった、という問題でもないです。
それだけの理由なら、敢えてOPMの3Dプリンターを選択する必要はないです。
HPやアップル、ホンダ向けの金型ともなれば、精度は当然として、それがもたらす大きなメリットがなければ、協業するこは難しいでしょうから。

アップル・ホンダ・HPと言えば、世界中で知らない人は皆無です。
当然、売り込みに来る企業は何千社にも及びます。
そんな、膨大な企業の中からOPMを選択した理由はなんなんだろう???
多分、フォックスコン・パナソニック・ホンダとの関わりが大きかったと思います。
この3社はもう何年も前からの付き合いですから、世界的な情報網を持つアップル・HPが、OPMの持つ卓越したテクノロジーについての情報を得ていないはずがない。
まあ、フォックスコンからの紹介だったっていうのが真実だとは思いますが。

そんな巨大企業の製品に採用されるためには、確実なメリットが見込めないとダメですから、他者では実現できない「何か」が存在していたんです。
自分が聞いた話では、フォックスコンとは5〜6年、HPでも1年以上共同研究をしてます。
実はここで重要なのは、HPにしろフォックスコンにしろフィリップスにしろ、OPMに対し単純に金型を発注した訳ではなく、パラレルな立場としてコンフォーマルクーリングを配した超高精度の金型を一緒に開発したって言うことです。

いろんな見方があるとは思いますけど、主従の関係ではなく、HPやフィリップスがOPMテクノロジーを利用することが、企業にとって大きなメリットであると判断した結果が今回の受注に繋がったんだと思います。
そうでなければ、こんなに時間を掛けてわざわざ3Dプリンタ使って金型作ろうなって考えないでしょ。
時間を掛けてでも、この技術を利用する必要があると判断したからです。
自動車関連では「CFRP」等の炭素繊維を利用するための必須技術であり、アップルやHPでは、サイクルタイム短縮のために必要な技術だからです。
さらに、3Dプリンタを活用することは、HPやアップルでは「デジタル化」という意味でも避けて通れないですからね。

ここのブログで散々ぱら啓蒙している日本版「インダストリー4.0」へ向けた一つの準備だとも言えます。
森本社長は日頃から「金型に拘るつもりは毛頭ない」「すべてのOPM250Lを繋げる」と言っているように、「インダストリー4.0」で3Dプリンタが中心的な役割を果たすことは、誰よりも理解されています。
つまり、世界的な企業が京都の小さな企業と一緒に仕事をしたい理由は「明らかな戦略的な意図」があってのことです。
その意図が理解できれば、今後どんな展開が待っているのか、簡単に理解できますよ。
また、ソディックがそのために果たす役割りも小さくないです。
それは、資金・ネットワーク・技術等。
OPMが何の心配もなく世界に羽ばたくための最良のパートーナーとして、なくてはならない存在です。

目的はサイクルタイムの短縮と精度

その巨大企業が何を目的としてOPMテクノロジーを採用したのか。
ここの読者からすれば「コンフォーマルクーリング」だろ?って思ってるでしょうね。
まあ、その通りなんですけど、実はそれだけではないです。
先ほど、明確な差別化がなければ採用しないと書いたように、OPMには他社にはない何かがある。
上の企業を見ると、基本的に電子制御関連ですよね。
ということは、そこで利用される部品はすべて高精度が必要とされる。
一般的に金属3Dプリンタは、従来工法に比べ精度的に問題があるのではないかというのが、大方の意見です。
しかしながら、すでに電子制御に関わる部品の金型に利用されている時点で、この心配は杞憂です。
ただ、そのことが金属3Dプリンター全体の精度の高さを証明したことには、まったくならない。
もし、そうであれば、上の企業が時間を掛けてまで金属3Dプリンタ金型に使えるまで共同研究はしないはず。
一般論では精度的には問題が残る金属3Dプリンタでも、様々な経験・ノウハウ・技術を情報として3Dプリンタに吹き込むことで初めて「電子制御に堪えうる精度の金型」を造形することが可能になるんです。

何も知らない人は「デジタルの制御なんて、どこが作っても同じだろ」みたいな事を言いますが、それが全然違う。
デジタルと言っても、制御するのはソフトであり、そのソフトを作るのは人間です。
つまり、OPMテクノロジーというのは、そのまま「金型に堪えうる精度を実現するためのノウハウ」と言うこと。
これこそ、巨大企業がほしがる技術なんです。

単にコンフォーマルクーリングだけではOPM250L以外でも作ることはできますし、金属3Dプリンタであれば簡単です。
しかし、それだけではまったく使い物にならない。
金属3Dプリンタを、高精度でも使えるプリンタにしたかったために、フォックスコンとOPMが、長年研究を積み重ねたんですね。
つまり、まとめるとこういうこと。

  • 1 生産時のサイクルタイムの短縮は絶対に必要
  • 2 1のためには金型をコンフォーマルクーリングで造形する必要があるが、従来工法では不可能
  • 3 しかしながら、現状の3Dプリンタでは電子制御向けの制度を持つ金型造形も不可能
  • 4 これをソリューションするためには金型・CAMのノウハウを持つOPMラボしか無理
  • 5 将来的は生産現場へのデジタル化を考えても、金属3Dプリンタを一早く導入する必要がある。
  • 6 そのためにはOPMラボには、資金・ネットワーク・技術を持つパートナーが必要

という理由からOPMはソディックと一緒になったんです。

つまり、「戦略的な意図」というのは、OPM250L等のハードだけが目的ではなく、OPMテクノロジーと金属3Dプリンタの組み合わせでしか、目的とするサイクルタイムの実現ができなかった。
そのために、「京都の小さなベンチャー企業と共同研究しよう」ってことに各社がなったんです。

ご理解頂けましたでしょうか。

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